2014-01-01から1年間の記事一覧

ニューヨーク帰りの「辻が花」と「慶長裂」

最近手に入れた2枚の裂、紅白に染め分けられた生地に 花と思しきものと石畳のように白抜きにされた石目模様 の「辻が花」である。見事な「糸入れ」の技術で僅かな 隙間にきちっと地色の紅が入り込んでいる。 絞りの技術の低下は、職人の指先の力の低下が原因…

色を見直す

染織の世界で糸や生地を染めるのには化学染料を用いるのが 一般的である。草木など植物染料を使うこともあるが、狙っ た色を出すには化学染料が適している。 さらに価格的に草木染めでは桁が違う上に日光に弱く退色が 著しいので使い難い。染料の他には「顔…

師走展迫る

今年の師走展は例年通り銀座「かねまつ」ホールで12/5,6日の 両日開催する。 今回のテーマは社員からの提案で「色が変わる」とした。 確かに昨年あたりから「濃色」が時の色になると感じているが 何が私にそう思わせるのか? 一言で言うと「風」と文学的に…

温故知新の旅を終える

10月に繰り延べした秋の展示会を無事にしかも盛況に終える ことができた事に感謝する。 今回のテーマは「正倉院裂」と「更紗2」、私の時を遡る 「温故知新」の旅は桃山縫箔、中世裂、遼代裂、平家納経を 経てついに最終章を迎えた。 日本の染織は奇跡的に残…

続 草木染

実は若いころ草木で糸を染めていた経験がある、と言っても キッチンの鍋や蒸し器を使ってやっていた程度だが 結構楽しく学べた。 例えば「緑」を染めるには黄色(刈安)で染めた後「藍」を掛けて 蒸すと緑ができる仕組みである。基本色「赤、青、黄」の染料を …

草木染の真の実力を見せつけられる

先般紹介した京都国立博物館を再度訪ねる。 前回見落としたものがないか再確認するためである。何度見ても 正直なところ染織のコーナーは他と比べて見劣りがする。 400年以上前の絹衣裳は保存状態が余程完全でなければ 見るも無惨な塊となってしまうから展示…

性美説

人間は誰しも美しいものを求める生き物である、性善説に喩えて 性美説とでも言おうか。(笑) この性分が備わっているから 趣向品や美術品など非日用品が売れるのである。 「衣食足りて礼節を知る」という故事があるが 「礼節」を「美」と置き換えてもいいだろ…

美術品の見方

「優れた作品は細部に至るまで不自然さや破綻したところが無い」 とある人から教えられた。 なるほどそう云えば「お宝鑑定団」に出品される物も 画面にアップで写し出されると木の枝先が妙にひ弱だったり、 鳥の足が有り得ない方向に描かれたりと 偽物である…

祇園街がなんとなく元気が無い

生まれも育ちも祇園なので幼友達が経営する料理屋やお茶屋 など行く処には不自由しない。 祇園と称する地域に厳密な境界線が有る訳では無く、 しいて云えば昔、電電公社(現NTT)の支局が建仁寺の南側にあり 祇園局(6)の電話番号を使用していた。我が家も当初…

手放し難い一品

普段飾ったり手にしない骨董品が知らないうちに結構 溜まっている、いい加減手放してしまおうかと思うのだが、 やはり止めておこうと踏みとどまる。 その一つが「加彩夫人俑」である。 中国唐時代(8世紀)に副葬品として作られた陶俑で 墓から掘り出された物…

さすが京都市!

京都市が主催する染、織職人育成プログラムがある。 10月から3ヶ月間、毎日2時間程度の実習講義を受ける。 我が社の社員も営業に就く前に必ずこの研修を受けるのが 慣わしになっている。 お客様に商品説明をし納得して買って頂く、その商品が どのような工程…

発見!

使われることなく埋れていた帯の紋紙(ジャガード機で織物を 作るのに必要なパンチカード)をとある織屋で発見した。 贅沢な素材と手間のかかる織作業を要求されるに違いない と直感した高級品である。おそらく30年ほど前に作られたものであろうか、 添付され…

自分の壁 養老孟司

読書好きの私でも最後まで読み切る本と 途中で投げ出してしまうものがある。 最近の「自分の壁」養老孟司著には 休む間も無く一気に通読させられる面白さがあった。 養老先生とは何度か食事を共にする機会があったが 私レベルでは会話が噛み合わず話が途切れ…

只今作業中!

深い緑地の無地に織られた生地の上にアップリケして 帯を作ろうとしている様子である。 散乱した時代裂、古い物は元禄時代の残欠もあるが 殆どは江戸時代末期の裂類である。 以前に切り刻んだ跡が痛々しいが 最期の小片になるまで使い切るのが 裂に対する供…

サービスとは何ぞや!

最近どこの食べ物屋さんでも、やたら食材の説明をしたがる。 こちらが尋ねてもいないのに説明を始めるのは如何なものか。 いけないのは客同士の話が弾んでいる最中でも 平気で説明の口を挿む。 はっきり言って迷惑で サービスの本質を取り違えている所業とし…

第65回京都展に向けて

夏物の制作も7月には一段落、 頭を切り替えて秋冬物の制作に着手する。 例年9月に開催してきた秋の京都展を今年は10月に開催する ことになった。 私にとって物心がついた頃から秋の季節の始まりは9月展示会 という固定観念があったが若い人達の意見を採り…

一人旅

祇園祭に併せて展示会を開催したいと若い社員が言い出した。 リベラル派経営者を自認する私としては認めざるを得ない。 トップの言い付けだけを守るのではなく若い社員からの自主性を 大切にするのが私の方針である。店のスペースを有効に活かし経費が掛らな…

ウズベキスタンの絣にチャレンジする。

法隆寺に伝わる「太子間道」と呼ばれる絹裂がある。 時代はおそらく7ー8世紀、 シルクロードを経て日本に伝来した絣の裂地である。産地はおそらくウズベキスタンと言われている。 私も裂帳に「太子間道」と書かれている小さな裂を所有するが 多分16世紀辺り…

徳田義三の影を求めて

徳田義三の名は西陣織の世界ではよく知られているが 一般的には無名かもしれない。 彼は昭和初期から40年台にかけて活躍した 帯のプロデューサーである。 本業は帯の図案家としてスタートしたが 後年は織物指導に充たり、独自の世界を創り上げた 不世出のア…

人間は美しいものを求める。

対象は物であれ女性であれ、美しいものは富や権力のある所へと集まる。 人は皆、美しいものに憧れ、 財力に証して、又は力ずくで手に入れようとする。 何に美を認めるかは時代と風土によって違いはあるが 美を希求する心は何時の世も同じである。 例えば「正…

民芸は難しい!?

大阪吹田の日本民芸館で開かれているインドの 染織展を見に行った。 案の定見るべきものは無かった。。 手間の掛かった仕事がなされているが感心しない…欲しく無い。 それって何故だろう? そもそも柳宗悦が高く評価した 「無名の職人による民芸的美術工芸」…

日本の染織を世界遺産に!

先日「和食」が世界遺産に登録されたことが大きな話題なったことを覚えていますか? 鰹と昆布のダシを使って食材本来の旨味を引き出す和食は、 平安時代に始まる宮廷料理が室町時代、茶道の懐石料理へと 進化し現在に至るという。 世界でも類稀な日本文化の…

衣更え

6月1日になると一斉に「衣更え」となる。 袷のきものが単衣に帯と襦袢は薄物になる。 我が店の設えも木綿から麻の暖簾に、ガラス戸が「葦戸」の建具へと衣更えをする。 季節感を大切にして折々の風情を楽しむ心は日本人ならではの感性、いつまでも続けて行き…

歌舞伎と「きもの」

音羽屋(尾上菊五郎)さんの長男菊之助さんと 播磨屋(中村吉右衛門)さん四女瓔子さんの 結婚披露宴に招待を受けホテルオオクラに向う。 播磨屋さんには30年にわたるご贔屓を頂き今宴で着用の打掛も制作させていただいたご縁で高い席を用意いただき恐縮している…

2014年夏の「はんなり展」を終えて

例年銀座、吾妻通りで開催していた夏物の展示会を 今年は並木通りで開催した。 夏のきものは今では特殊なものになったかのようである。 暑い盛りに帯で締め付けられるのは真っ平 というのが女性の本音であろう。(よくわかる!) 染屋でも夏物は作らない所が多…

出版感謝パーティー

思いの外素晴らしい仕上がりであった「布の道標」の出版を記念してお世話になった方々を祇園三國にご招待して賑々しく出版感謝パーティーを催す。 あいにく杉本博司さんはパリでの個展の為出席はかなわなかったが泉田老師もわざわざ大宇陀からお出まし頂き愉…

能は難しい!

妻が観世流の謡を習い出して何年になるだろうか? 発表会があるというので岡崎の観世会館に赴く。 小さい子供達の出番が終わると妻ともう一人シテ役の女性、 地謡をしてくれる先生方7人の錚々たる布陣で始まった。 謡は言わずと知れた 観阿弥、世阿弥が室町…

新緑の糺の森(ただすのもり)

4月に満喫した桜を連休の蓼科で今いちど愛でる機会を得て 大満足、残雪の峰々が連なるアルプスは京都では観ることの できない雄大な自然美である。 この山々に故郷の想いを抱く人もきっと多いと思う。 やはりこの季節はおのずとと心が華やぎ身も心も解放さ…

そうだ「京都」行こう!

このJRのキャッチコピーのセイではないだろうが、 京都にやって来る観光客が多い。 特に今年は白人系の団体客が目に付く。 中国人だってきっと多いのだろうが一目見て東洋人は背も低いし 我々に似ているので目立たない。 先日の桜満開の頃は、祇園界隈でも人…

「布の道標」完成

私にとって一つの集大成と言うべき拙著 「布の道標」が先週ようやく納入された。発案から丸一年を要したが待った甲斐があった出来栄えに 私自身も満足し、大きな達成感を味わっている。 何度もブログに書き及んだ「正倉院裂」の入手は強運としか 言いようの…