2013-01-01から1年間の記事一覧

盛況御礼

先週、金、土曜日の2日間開催した 東京銀座での師走のはんなり展は盛況の内に終えられた。 来場者を始め関係各位にお礼を申しあげたい。 冬晴れの天候に恵まれ、ことに土曜日は終日満員で対応が間に合わず失礼があったのではないかと反省している。 テーマ商…

師走展

今年も東京での師走展が近づいた。 例年の事だが、 上京すると刺激を受けるので実は楽しみにしている。 今年のテーマは「辻が花」とした。 改めて言うまでもない日本染織史上の最高傑作、16世紀に 花開いた至極の美に私が挑戦したのだ。 手前味噌ではあるが…

思わぬ反響

先般手に入れた正倉院裂を 出版のためにパンフレットに掲載したが、 それがエライ騒ぎを巻き起こしてしまった。 パンフレットをみた読売新聞の記者が、裂に関する情報と真贋を 特ダネとして取り上げたいと飛んできた。 私にすれば本の前宣伝にでもなれば幸い…

おしゃれ

時々人から「おしゃれですね!」と声をかけられる、 お世辞だろうが満更でもない。 ふと「おしゃれ」の定義は?と調べると 「髪型、化粧、服装など身なりに気を配る人」とある。 なにを隠そう私もその一人であると認める。 しかし「センス」がいいか悪いかは…

平和の陰で

木枯らしが街路樹を朱く染めて始める。 鴨川縁から遠く比叡山を望むと早くも冬の気配を感じさせる。 晩秋の短い一日を 人々は思い思いの楽しみ方で満喫しているかのようだ。 病院の出入り口に通じる戸口には外出を許された患者たちが、 パジャマにガウンを羽…

正倉院展を観て納得する。

現在、奈良国立博物館で第65回正倉院展が開催されている。 今回の私の目的は、 先日入手した正倉院裂の真贋を確かめる為である。 会場に入るとそれは第一番目の展示品であった。 「鳥毛帖成文書屏風」その額縁に使われているのが 手に入れた「宝相華紋錦」の…

High sense, High quality

きものの業界だけのことではなく、近頃センスが良いものを 結構見かける、だが品質の良いものは少ない。 実用品の世界では最高級の品質を求めるのはどうかと思うが 嗜好品はやはりBest Qualityを望みたい。 昔、と言っても半世紀前まで絹はそれ自体が最高級…

官用と民用

中国の陶磁器は官窯と民窯の差がハッキリしている。 官窯は全てにおいて精緻に作られている、 いや精緻なものだけが残されている。 民窯は数多く作る必要があったので 曖昧な作りでも許されたのは無理もない。 そんな官と民の区別がインド更紗にもあったとは…

地唄三味線事始め

今月から地唄三味線を習い始めた。 地唄とは(地=土地)の歌、 つまり京、大阪の歌という意味で江戸唄に対する言葉らしい。 中竿三味線の弾き歌いが特徴である。 そもそもこの地唄なるものに興味を持ったのは随分以前の事である。 東京に「武原はん」という地…

正倉院裂来たる。

究極の古代裂、「正倉院裂」を手に入れる。自分でも信じられない!!ことの始まりは数ヶ月前、とある古美術店を訪れれた時、 ご主人から「いいものを見せてあげましょうか」と持ち掛けられた。何が出てくるかと思えば何と正倉院裂である。 一目見た瞬間「凄…

堪え性の無い現代人

最近京都の料理店に行っても 畳の上に座いすを置いて食事することが多い。正座がキツイというお客が多いからだという。 しかし床の間に飾られた調度品や掛軸を 上から見下ろすということになるので違和感がある。 茶道も習う人が増えない理由も 長時間の正座…

桂川氾濫と桂離宮

16日の台風18号によって桂川が氾濫、渡月橋から下流一帯に 大きな爪跡を残したまま京都に秋がやって来た。 まさかあの桂川の水が溢れるなど京都市民には信じられない 大事件となった。 我家の近くの鴨川も歩道が冠水し、あわや洪水かと危ぶまれたが、寸…

ブログのブログ

ブログを書き始めて何年になるだろう。 自分を裸にして書く、 他人を中傷しないの二点を基本に書き続けている。 とかくネット社会は「言った者勝ち」、 言いたい放題、社会に向かって物言えるわけだから、 鬱憤の溜まりやすい人にはうってつけのストレス解消…

型染めに再挑戦する。

型を使った染物の一つに「型小紋」がある。 それに対して手で描いたものを「手描き」と呼んでいる。 この両者のどちらが優れているかという事ではなく、 それぞれの特長を生かしたものが優れている物というのが 正しい評価である。 しかし御多分に洩れず「型…

64回目の展示会迫る

一年は早いような遅いような不思議なものである。今年も店での展示会のシーズンが迫った。 昭和24年から展示会というものを始めたらしく、 私が一歳だったから回数を数えるのはいたって容易い。 また、 今年が創業170年目にあたるので一応老舗と言われ…

鈴木 治展を観る。

京都国立近代美術館で開催中の「鈴木 治展」を観る。 同氏は陶芸の世界で八木一夫氏らと共にアートとしての陶器に 情熱を燃やした作家である。 初期の作品は例によって「織部」、「黄瀬戸」など桃山の焼き物を踏襲する。 しかし、 晩年の作は実用を離れ「観…

ラッフルズに逗留す。

東南アジアはいま一つ興味が湧かなかった、と言うのも 湿気が多そうだし虫やなんかに刺されそうで敬遠していたのが 本音である。 ただ名建築があり、 第二次世界大戦中は日本帝国陸軍の将校専用宿泊所として 使用されていたラッフルズホテルには一度は行って…

「大停滞の時代を超えて」 山崎正和著を読む

時に「目から鱗」といえる本に巡り合うことがある。 「大停滞の時代を超えて」 山崎正和著もその一冊である。 山崎氏は以前から演劇評論家としての高名を承知していたが、 演劇に止まらず時事巷説に通じ卓見の主であることが解る。 例えば『個人主義には二と…

建築家はエゴイスト

染物、織物を作る仕事をしていて消費者の意向を聞いて作るのは稀である。 特定の人からT.P.Oを踏まえ、しかも似合うものを作って欲しい! という依頼を受けた場合以外、自分の創意と古典を頼りに作る のが私のやり方である。 この点で建築家と違うのはクライ…

平家納経シリーズ、一つの完結

平家納経をヒントとして制作してきた一連の物作りも 今回完成した「伏線蝶に組紐縫い」訪問着によって 一応の完結を見た。 錆朱色に切り箔、野毛の金銀箔を置き、 組紐を模した刺繍と伏線蝶の丸紋を縫い取ったもの。 全て平安時代のエスプリともいえる素材で…

贅沢は敵か?

歴史を紐解くと江戸時代、京から運ばれた染織品は高級品とされ 申し訳ないが関東近隣で作られたものは廉価品という位置付けが されていたようだ。 確かに1000年の都であった京都は、 天皇を頂点とした高級消費者が君臨していたのだから、自ずと 値段は高いが…

江戸の商法

結構乱読癖のある私は、 常時2-3冊の本を同時並行して読んでいるが、最近江戸の商法 について事例を挙げて詳しく書かれたものを見つけた。 それによると江戸時代の商家は 家業の継承と同業者の組合を大切にする精神が 徹底されていたという。 同業組合は「株…

金の時代

お金という意味ではありません。 金色、銀色の話です。 色調の移り変わりと同様に金の時代、銀の時代がある! と以前から思っている。 つい最近まで金色に光り輝くものを見ると違和感を感じる、 というよりもむしろ拒絶反応を示して来た。 そんな経験はあり…

友に引かれて上高地

山好きの友人に誘われ暑い京都を離れ上高地に向う。 山小屋に泊まって早朝の湿原を散策する旅だという。 この手の旅行は不慣れな私だが、 友人の言葉を頼りに荷造りして現地に赴いた。 しかし案の定、必需品を忘れてきた。 「懐中電灯」「虫除け」「長袖」粗…

「金更紗 」見事な出来栄え

先般入手した「金更紗鶏頭手」を手本に「写し帯」を制作 してきたが昨日、素晴らしく仕上がった。 結城紬 染帯 金更紗鶏頭手 本歌は当然木綿だが私は「結城白生地」を選択した。 表面の「寂びた」表情が、 上質なインド木綿に最も似通っていると判断したから…

出版準備着々と進む

前述のコレクション出版の準備は徐々に肉付けが進んでいる。 寄稿いただく方々も快くご承諾いただき感謝に耐えない。 巻頭は大徳寺530世泉田玉堂老師、 続いて現代アート作家の杉本博司氏、 古美術商 柳 孝氏の御三方である。 いずれも普段から昵懇にさせて…

どこまで崩していいのか「きもの」のしきたり?

結論から言ってしまえば 「しきたりは知った上で自分の意思で自由にどうぞ」というのが 私の意見。 推測するに他の国においても 民族衣装はより簡略化しているのではないだろうか。 日本の「きもの」事情も社会の変化、特に第二次世界大戦以後、 アメリカの…

繭の実状を知る 2

一方、 絹糸の輸出国、中国とブラジルの状況と言えば 経済成長の著しい中国では着物需要を当て込んだ養蚕は 急減しているが人件費は高騰している。 品質が安定していると言われるブラジル産生糸においても 日本への輸出から欧州へと振り替えていると聞く。つ…

繭の実状を知る

今年の冬は、 例年より厳しい寒さを感じたのは私ばかりではなかろう。 ゴールデンウィークの最中に山形では新雪が15cmも積もったのだから尋常ではない。そのせいで蚕が大きなダメージを受け最も良質とされている 春繭が激減したと聞く。 唐織の帯を織るため…

足元が危うい呉服業界

近頃よく業界人から聞こえてくる話題は芳しくないものが多い。 円安による燃料費上昇によって重油を必要とする 「蒸し屋」「錬り屋」といった生地を加工する業者が 悲鳴をあげている。 世界的な紙幣余りから生糸の相場に流れ込むマネーのせいで 絹製品の実需…