2013-01-01から1年間の記事一覧

「夏のはんなり展 」感想記

6月7日8日の両日、 東京銀座 清月堂ギャラリーに於いて夏物の会を催す。 最近夏物のきものを作る店が少なくなったと聞くが「ぎをん齋藤」は相変わらず夏物を積極的に作っている。 その訳は一つには世間が作らなくなったから返って沢山作る方が得策だと考…

出版を決意

創業170年の記念として 古裂コレクションを出版しようと決めた。 振り返ってみれば30歳半ばから少しづつ蒐めてきた裂類も 100点余り、古いものは8世紀、唐時代のものから幕末までの 染織裂が手元にある。 この期に集大成として本にしようと 関西学院大学の河…

「ぎをん齋藤」を支える人達

ぎをん齋藤の代表者として20年余り、なんとか切り盛り出来たのは店を支える人達有ってのことである。 染や織の各工程を担う職人達、営業活動に携わる社員など多くの人間がぎをん齋藤を支えている。 優秀な社員や技術の秀でた職人と出逢い、 満足した結果が得…

ぎをん齋藤の歴史

日野屋から暖簾別けを許され独立した経緯や年号は正確には分からなかった。 その理由は幕末に店が存在していた元誓願寺近辺は、 蛤御門の変によって消失し一切の帳簿が手元に残らなかった からである。 先日、亡父の27回忌を行った際、ご住職と過去帳の照ら…

不可思議な体験

霊的な感受性は皆無ではないが差して強いと思ったことはない。 先日、 杉本博司プロデュースによる 「三番叟」を再び鑑賞する機会を得た。 演者の野村萬斎氏以外の地方連は前回とは違った顔ぶれ。 狂言一番に次いで始まった三番叟はやや短く 端折ったもので…

妹島和世氏 来店す。

世界的女流建築家の妹島和世氏が 杉本博司氏と共に来店された。 女史は日本人の持つ繊細な美意識を建築という手段で 世界に敷衍されている。 ベネチアビエンナーレ金獅子賞、 建築界のノーベル賞ブリッカー賞を受賞し、 ルーブル美術館別館を手掛けるなど世…

トータルコーディネート

私のきものコーディネートの基本的コンセプトは明瞭である。 「きもの」と「帯」が 互いに引きたて合う相乗効果を大前提にしている。 「屋上に屋を架さず」という言葉があるが、この戒めは着物と帯に同一の模様を描くのは感性的に避けるのが良いと教わった。…

春爛漫

桜は日本人にとっても私にとっても特別な花である。 骨髄移植を受けて以来、指折り数えてきた春も今年で9年目、 退院した4月を昨日のように思い出す。 抜けるような青空に薄ピンクのコンビネーションは絶妙であり、 理屈抜きに幸せな気持ちにさせてくれる。 …

壮絶な人生

旧知な画家2人の個展を見て回った。 一人は風景画を得意とする日展系の画家で穏やかな色調と安定した構図が静謐な自然美を描き出す。 ブルーの色が独特の清涼感を醸し出し一枚は欲しいところだが掛ける場所が我が家には無い。何故ならば古裂で壁が埋め尽くさ…

古渡り更紗

日本へ渡来した時代別に古渡り、中渡り、新渡りと区別する。 古渡りの中でも日本からの注文品として制作されたものと、 インド国内向け、東南アジア向け、ヨーロッパ向けなど千差万別、 本当に出来のいいものは数少ない。 日本からの注文品は木綿の質も最上…

東京展示会を終えて

15,16日の東京展示会は大盛況の内に終了した。 接客が充分に出来ないままの二日間であった。 ご来場頂いたお客様各位に心からお礼を申し上げたい。 ここ数年デフレ不況と思われる原因で低調であったが、 特に一昨年は東日本大震災と会の初日が重なり命からが…

「切り付け」の歴史

生地の上に別の生地を貼り付ける、いわゆるアップリケの技法を 日本では「切り付け」と呼んでいる。 この技法の歴史は以外と古く桃山時代の衣装にも見かけられる。 岡山県池田藩に伝わった能衣装の数点は、 この「切り付け」が施されている。 その理由を推測…

「誂え」の流行

オーダーメイドを日本語では「誂え」と言う。 最近来店られるお客様はこの「誂え」を希望される方が増えてきた。 ぎをん齋藤は幕末から大正時代頃までは数件のお客様だけを 対象に「誂え」を専門に仕事をしてきたようである。 昭和になって経済が大きく発展…

「等伯」安部龍太郎著を読んで

日本経済新聞に連載されていたものを単行本として発行され、 直木賞を受賞するという快挙をなした話題の作品である。 等伯は有名な「松林図」の作者として著名であると同時に 私の個人的関心の対象である。 「空気感」を描ける絵師として崇拝の対象でもある…

職人との懇親会

「双葉会」と称する職人たちと私との懇親を目的とした会を 63年間、年一度のペースで続けている。 職人の仕事振りは社員を介して毎日確認しているが、 話をする機会は滅多にない。 私の指示通りの仕事をし、出来栄えを見て工賃を支払うという 作業を毎日、七…

久々に手に入れた一品

永くいい裂に巡り合うことが無かったが 先日素晴らしい逸品を手に入れる事ができた。 「紅地横段松皮絞り菊辻が花」小袖 断片ではあるが構図(景色)の素晴らしさに迷うことなく買い求めた。 値段は予想をはるかに超えた高額であったが、買い逃して悔しい 思い…

運命論

ちょっとした弾みで4日間入院することになり、狭いベットで物思いに 耽ってみると若い頃には運命というものをあまり信じていなかった。 自らの未来は自分で切り開いて行くものだと思っていた。 しかし64歳になって人生を振り返ってみると、 なにか運命の糸に…

浄瑠璃寺を訪れて

数少ない平安建築、京都南部、木津町にある浄瑠璃寺を訪れた。 (参考:フリ−百科事典「Wikipedia])平安末期に建てられた本堂は国宝であると同時に、 回遊式庭園と対面する三重塔も国宝である。 同寺の圧巻は本堂の九体の阿弥陀如来。 (浄瑠璃寺は撮影禁止…

男と女の間

普段の着物を織ったり染めたりするのは何百年も前から 女性の仕事と決まっていた。 世界の歴史を見ても自給自足の時代が永かったが日本において 江戸時代は木綿が中心である。 白木屋 歌川国貞(初代)画 天保年間(1830〜1844)刊 絹の着物は糸が高価な上に…

精神性

この正月は「きものに精神性は必要か?」 という問題に悩みつづけた。 今日、要約結論に至った。.....不要!! 何故ならば、きものを焼き物に例えれば、 「茶道具」ではなく「日用食器」だから。 同じ焼き物でも茶器と食器は違う。 陶芸には変わりはないが、 …