2011-01-01から1年間の記事一覧

蛮絵

古裂コレクションの一つ、東寺「蛮絵」の「写し」を染めてみた。 たまたま手に入れた大麻布を何に染めたらいいか迷っていた所 「蛮絵」を思い出し、染め帯で試みた。 本歌は木版染だが今回は手描きでやってみた。 雰囲気はかなり出たが、 一体誰が帯とし使っ…

中国で紹介された「ぎをん齋藤」

中国国内で発行されている「生活」という月刊誌に 「ぎをん齋藤」が紹介された。アート系の写真と記事のレイアウトは 日本でも見かけられない洗練された作りである。 モノクロ写真を中心に読者の想像力を高める手法は 文化後進国とは思えない。 表紙は日本で…

目から鱗

染織のプロを自認する私だが、その道の研究者の話を聞くと 改めて自分の無知を知らされる。 京都工芸繊維大学で行われた「染めを語る」と題した シンポジュームに参加して江戸時代から近年までの染織史、 特に技法の講義を聴いた。 印象的であったのは、きも…

「たっぷり」の美意識

楽茶碗の特徴は黒の釉薬に纏われた手捻りの柔らかさ。 さらに「たっぷり」としたシェープが売り物である。 利休が朝鮮半島から連れ帰ったという長次郎があみ出した 楽焼。 ろくろを使わず手だけで造形し、 一椀ずつ小さい窯で焼く手法が産み出す茶碗は工芸品…

「からむし」

「からむし」(苧麻)を緯糸に織り込んだ織地に 格子の型染めを施した袋帯を制作してみた。 麻独特の野趣な生地感に ぼかし足の長い型染めは、 織物でもなく染物でもない微妙な仕上がりに満足している。 そもそも染物と織物は、 完全に違った地域、人、技術で…

三十三間堂と宗達

京都国立博物館への帰り道、真向かいの 三十三間堂に立ち寄った。子供の頃に一度行ったことは記憶しているが、その時の印象は 煤けた仏像がやたら並んでいる横長いお堂としか残っていない。 今度訪れた理由は時間の余裕があったのが一つと先般、 杉本博司氏…

泉田老師のこと

(大徳寺山門)茶友である大徳寺松源院 泉田玉堂老師がこのたび大徳寺530世に就かれることになった。 師とは20数年前にある茶道流派の門下に席を同じくしたご縁で親しくさせて頂いている。 その後愚息を一年間、松源院にお預かりいただくことになり、大変感…

偶然出会った二枚の裂

20年前になると思うが、一枚の裂を手に入れた。 茶入れの仕覆を解きほどいた慶長裂である。 不思議な構図にリアル表情の人物像の刺繍、 特に「象」の絵が気に入ったので購入した事を記憶している。 古い時代に特有の鋭い面付き、後世のものではこうはいかな…

被災地、石卷を訪ねて

被災地、石卷を訪ねて知人のA氏を見舞いに行きたいという思いは震災直後から強くあった。 ただ事が余りに深刻であれば掛ける言葉を失ってしまいそうで 赴く勇気が無かったのが正直なところだ。 別の友人からA氏の情報を集めながら行くタイミングを計っていた…

杉本「雷」が台風に吹き飛ばされた。

楽しみにしていた杉本狂言 「三番叟 」二番、 開催されたが台風15号の影響で 交通機関が停止され観客半分以下の淋しい上演となった。 誠に運が悪い。 強風が天井から音を発てる中「野村万作」の舞台が幕を開けた。 古格漂う舞いの背景には 「松林図」を想わ…

「フェルメール」と「モホイ=ナジ」

京都、岡崎、平安神宮の辺りは 文教地区、市立美術館と国立近代美術館が向い建つ。 祗園からも徒歩20分の距離で、 時間をみつけて散歩がてら訪ねてみた。 「フェルメール」は 17世紀オランダで活躍した画家、あのレンブラントと 時を同じくする。この時代の…

江戸風俗における「きもの」考

江戸時代は、士農工商の身分制度による管理統制社会で あったが遊廓における花魁はある種特別視されていた。 特に江戸中期以降、商家の経済力が増すにつれ 豪華な衣装を身に纏う女性が華美禁止の対象になる始末。 浪花の淀屋辰五郎などは、その華美な暮らし…

「杉本文楽」鑑賞記

今年3月に上演予定であった「曽根崎心中」がようやく 開演された。 「天満屋の段」で使われる暖簾を初めて舞台で見ることができ、正直ほっとしている。 この演目の最後の心中場面はサラッと表現されることが一般的であるが杉本氏はこの場面こそエロスの極み…

想定外?

静かな海を眺めて被災された人々の気持を推し量り、 自分の平和な生活に感謝の心が自然と湧き溢れた。 今回の東日本大震災は想定外の規模であったとされている。 それに伴う原発の事故も不可抗力との報道が一般的である。 しかし国がいう想定外とは何を基準…

伝統と革新

伝統とは 「歴史の中で形成されてきた各種の形態から特に重んじられ、次の世代に継承すべきもの」とある。 守るべき伝統と怠惰に安住する固陋を区別しなければならない。 革新とは 「既存のものをより適切と思われるものに変更する」という。 (外装はそのま…

Y氏の事

Y氏は高名な美術商であり本当の目利きである。 氏とは近隣者同士として数十年のおつき合いを願っている。特に氏から「物の観かた」を教わった事は、 私の大きな宝である。 「初めて見るものの良し悪しが解らなくても当然。わかるように なるには同類の物を集…

世界遺産「清水寺」での撮影

先日清水寺へ撮影の為に久し振りに訊ねる機会を得た。弊店からはそう遠い距離ではなく、 以前アメリカンボクサーを飼っていたころには毎朝、 清水寺の山門まで散歩に行っていた位である。 知恩院から円山公園、三年坂を経て寺の参道を登り、 新門前の店に戻…

世界遺産への思い

現在私が住まいするのは世界遺産「下鴨神社」の隣である。 お蔭で「糺ノ森」という原始林は京都の原風景として、 そっくり保存されているので近隣に住まう者には幸せな場所だと感じている。 つい最近、平泉の中尊寺も世界遺産に登録され、 あの素晴らしい奥…

狂言衣裳

敬愛する杉本博司氏より新たな依頼を受けた。 狂言、三番叟の衣裳を染めてほしいとのことである。 杉本氏がデザインし私が染め、仕立て上げるのだが 9月21日に着用という日限付きである。 本来、狂言の衣裳生地は大麻が主流であったが、 麻薬として悪用さ…

最近の話題から感じたこと

日本でも大変な人気の韓流ポップ(Kポップ)が欧州でも熱狂的な人気を博しているという。 [ イギリスやドイツでは韓国の労働条件が奴隷のごとくと酷評し 人気に水を差しているらしい。 日本と韓国は近い親戚のようなものだからKポップに対して 違和感はない…

不思議な展覧会

先日、なにげなく覗いた小さな画廊、 いっけん時代がかった掛軸が十数本展示されている。 水彩画やポップアートなどを展示している催事は良く見かけるが古美術商の展観でもなさそうだし、興味を惹かれて中へ足を踏み入れた。 なんと、 「本阿弥光悦」の書を…

日本文化の衰退

最近特にかんじるのは日本文化の衰退である。 京都においても私の生業である「きもの」をはじめとして和文化への評価の低下(見方をかえれば生み出されるものの質的低下ともいえる)が著しい。 私がこの世界に入った40年ほど前、 物作りの現場では人よりも精緻…

夏、単衣のきもの

六月一日は現代の「衣替え」の日、 わが家でも暖簾を木綿から麻へ、 建具を襖絵から「よしず」へと一斉に替える。 「よしず」から射し込む日の光は透過性の高い陰影を醸し出し、洗いざらしの生成りの麻は目にも涼やかである。 こうして働く人間も自然の移ろ…

「鳥襷宝尽し緞子」 仕覆 の復元

広島を中心に活躍される茶道、上田流の依頼を受けて 同家伝来の仕覆(茶入の袋)を復元する機会を得た。 「鳥襷宝尽し緞子」とは 中国、明時代に織られた緞子(正式な織名称は4枚綾織)。 茶道で使われる名称と織物の正式な名称とは 違ったものが多く、混同して…

世紀末症状?

サブプライム債権という 新手のギャンブルに負けた欧米の金融機関救済の為に紙幣が増刷され、その結果、現物市場である石油、食品、生糸など 生活に密着したものまでが値上がりし、多くの人々の生活を 圧迫している。 サブプライム債権など金融商品といえば…

選ばれた世代?

第21回の東京展は大地震の洗礼を受けることになった。 3月11日、2時半過ぎ、ようやく多くのお客様が来場された矢先 あの大地震に見舞われた。 武原ビルの五階の会場は恐怖に駆られた。 我々は「あー」という言葉を発するだけが精いっぱい… 倒れそうな照明器…

音に酔う

京都出身で 今や時の人となった指揮者、佐渡裕と盲目のピアニスト辻井伸行君のコンサートが 京都コンサートホールで開催された。 チケットは確か半年前に購入し その日が来るのを楽しみにしていた。 近頃、 京都では目ぼしいコンサートが開かれることが少な…

3月東京展に向けて

3月11日より開催する「京を楽しむきもの展」も今年で21年目を迎える。 【長谷川等伯の松林図をモチーフに構成】 永らく続けれて来られたのも 関東の「ぎをん齋藤」ファンの皆様と 会場をお借りする武原様のお陰だと 感謝の気持ちで一杯である。 この会…

「一見客お断り」の本意

京都の老舗には「一見客お断り」という店は今でもかなり多いと思う。我が家でも一見のお客様をやむを得ずお断りすることがある。とくにお茶屋などはほとんどそうである。それゆえ京都は気位が高くて嫌だと断言する人もいるであろう。 マスコミで紹介されてい…

寒い日曜日は博物館めぐり

屋外で体を動かすのが好きな私だが 寒い日曜日は美術館、博物館めぐりが最高である。特に今年の冬は寒さが厳しくアートなものに触れることが 多かった。 期待せずに訪れた博物館で素晴らしいものに出会った時は 「大儲け」をした喜びと言える。 先般訪れた奈…