「たっぷり」の美意識
楽茶碗の特徴は黒の釉薬に纏われた手捻りの柔らかさ。
さらに「たっぷり」としたシェープが売り物である。
利休が朝鮮半島から連れ帰ったという長次郎があみ出した
楽焼。
ろくろを使わず手だけで造形し、
一椀ずつ小さい窯で焼く手法が産み出す茶碗は工芸品の極致
とも言える。
さらに黒楽茶碗に点てられた濃茶の緑色、
利休の「たっぷり」とした美意識を端的に表していると感じる。
歌舞伎を見ていると大向こうから「たっぷり」!と掛け声が入る。
名場面で千両役者の至芸を「たっぷり」と見せて欲しい!
との意味か。
中国の唐時代の焼物も似た「たっぷり」としたシェープのものが
多く見られる。
我国でも天平白鳳時代の美人といえば正に「たっぷり」とした
顔立ち、身体つきである。
この一つの美意識は、
日本人の中に脈々と流れる美の本流であり、
私も物作りの基準としている。
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