思わぬ反響

先般手に入れた正倉院裂を
出版のためにパンフレットに掲載したが、
それがエライ騒ぎを巻き起こしてしまった。

パンフレットをみた読売新聞の記者が、裂に関する情報と真贋を
特ダネとして取り上げたいと飛んできた。


私にすれば本の前宣伝にでもなれば幸いと
取材を承諾したのだが、その記事が朝刊の社会面に
大きな活字と写真付きで出た。


新聞記事というのは原稿を校正することもなく、
突然一方的な記者の表現になる。


「流失した正倉院の錦、京都の呉服店で発見」!!


いやー驚いた!


まるで流失させた張本人にさせらたようで、
悪いことをしたかの錯覚に陥る。


記事の裏を取るために
河上先生や奈良国立博物館まで手がずを掛けたようで
心苦しい。


確かに正倉院裂が市中に出回ることは尋常なことではないが
前例が無い訳ではない。


以前にも何度か正倉院裂を見たことがあるし、
個人のコレクターが秘匿していることも知っている。


今回の反響の異常さは「正倉院」という
ネームバリューが生み出したイリュージョンである。


8世紀の錦の裂は中国で出土した品なら
結構市場に出回っている。


妙な事で世間を騒がせたのは私の本分とするところではない、
染織の歴史を辿る私のライフワークの一環であり、
日本の染織技術の高さと感性の素晴らしさを世界に示すための
手段でしかない。





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