草木染の真の実力を見せつけられる

先般紹介した京都国立博物館を再度訪ねる。


前回見落としたものがないか再確認するためである。何度見ても
正直なところ染織のコーナーは他と比べて見劣りがする。


400年以上前の絹衣裳は保存状態が余程完全でなければ
見るも無惨な塊となってしまうから展示できるものは
限られるので、仕方ないのかもしれない。


寂しい気持ちを抱きながら漆芸のコーナーへと進む。蒔絵は
平安時代のものは希少だが鎌倉時代のものは染織品と比べると
結構現存する。絹と木の強さの差であろうか。


その中に「松喰い鶴」の蒔絵が描かれた冠箱とおぼしきものを
見つける。時代は鎌倉時代末の南北朝時代(14世紀)の作らしい。
は箱の脇に置かれ内張りの織物がハッキリ見える、「蓮唐草」
錦織である。


私が所持する「熊野速玉神宝裂」と類似形の
倭錦(やまとにしき)だが目を奪われたのはその色である。
「緑、緋、薄紅」の三色が段織に蓮が描かれているのだが
その色の鮮やかなこと、しかも上品で力強い。


よほど蓋がシッカリと閉じられて光が入らないよう保存されて
きたのであろう、従来の私が抱いていた草木染のイメージが
完全に崩れ去った。現代のどんな染料でもあの色は出せない。
草木染を過少評価していた自分が恥ずかしい。


速玉裂も同じ色で織られているはずだが褪色が甚だしく
色彩としての魅力は全く感じない、ただ700年という風雪を
耐えてきた歴史の重さが存在するだけだ。




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