ニューヨーク帰りの「辻が花」と「慶長裂」

最近手に入れた2枚の、紅白に染め分けられた生地に
花と思しきものと石畳のように白抜きにされた石目模様
の「辻が花」である。見事な「糸入れ」の技術で僅かな
隙間にきちっと地色の紅が入り込んでいる。


絞りの技術の低下は、職人の指先の力の低下が原因だと
されている。400年前には無造作に行われていた糸入れ
は今では全く伝承する人はいない。


インド
を発祥とする絞り染は「辻が花」として日本で
花咲いた。日本人の繊細な感性と絵心の豊かさが戦国
時代の真っ只中で花開いた。


この裂はニューヨーク在住の古美術商から購入したもの
で、何十年かぶりに里帰りしたもの、アメリにも僅か
ではあるが日本の染織品を好む人がいるらしい。


もう一枚は「慶長縫箔裂」と総称される小袖裂、珍しく
大きなものが手に入った。

100cmx38cmほどはあると見えるが黒地に一面疋田の格子
で区切り、金箔の型染めが施され一部は様々な草花の
刺繍が施されている。中には珍しく馬の轡がみえる。


当然何か古典文学を象徴する文様であろうが、私には
見当がつかない。物語を巧みに文様化し稚拙ともみえる
刺繍技法が当時の人々の素朴さを表している。


今年も一年ご高覧いただき、有難うございました。
                         齋藤 貞一郎



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