発見!

使われることなく埋れていた帯の紋紙(ジャガード機で織物を 作るのに必要なパンチカード)をとある織屋で発見した。 贅沢な素材と手間のかかる織作業を要求されるに違いない と直感した高級品である。おそらく30年ほど前に作られたものであろうか、 添付され…

自分の壁 養老孟司

読書好きの私でも最後まで読み切る本と 途中で投げ出してしまうものがある。 最近の「自分の壁」養老孟司著には 休む間も無く一気に通読させられる面白さがあった。 養老先生とは何度か食事を共にする機会があったが 私レベルでは会話が噛み合わず話が途切れ…

只今作業中!

深い緑地の無地に織られた生地の上にアップリケして 帯を作ろうとしている様子である。 散乱した時代裂、古い物は元禄時代の残欠もあるが 殆どは江戸時代末期の裂類である。 以前に切り刻んだ跡が痛々しいが 最期の小片になるまで使い切るのが 裂に対する供…

サービスとは何ぞや!

最近どこの食べ物屋さんでも、やたら食材の説明をしたがる。 こちらが尋ねてもいないのに説明を始めるのは如何なものか。 いけないのは客同士の話が弾んでいる最中でも 平気で説明の口を挿む。 はっきり言って迷惑で サービスの本質を取り違えている所業とし…

第65回京都展に向けて

夏物の制作も7月には一段落、 頭を切り替えて秋冬物の制作に着手する。 例年9月に開催してきた秋の京都展を今年は10月に開催する ことになった。 私にとって物心がついた頃から秋の季節の始まりは9月展示会 という固定観念があったが若い人達の意見を採り…

一人旅

祇園祭に併せて展示会を開催したいと若い社員が言い出した。 リベラル派経営者を自認する私としては認めざるを得ない。 トップの言い付けだけを守るのではなく若い社員からの自主性を 大切にするのが私の方針である。店のスペースを有効に活かし経費が掛らな…

ウズベキスタンの絣にチャレンジする。

法隆寺に伝わる「太子間道」と呼ばれる絹裂がある。 時代はおそらく7ー8世紀、 シルクロードを経て日本に伝来した絣の裂地である。産地はおそらくウズベキスタンと言われている。 私も裂帳に「太子間道」と書かれている小さな裂を所有するが 多分16世紀辺り…

徳田義三の影を求めて

徳田義三の名は西陣織の世界ではよく知られているが 一般的には無名かもしれない。 彼は昭和初期から40年台にかけて活躍した 帯のプロデューサーである。 本業は帯の図案家としてスタートしたが 後年は織物指導に充たり、独自の世界を創り上げた 不世出のア…

人間は美しいものを求める。

対象は物であれ女性であれ、美しいものは富や権力のある所へと集まる。 人は皆、美しいものに憧れ、 財力に証して、又は力ずくで手に入れようとする。 何に美を認めるかは時代と風土によって違いはあるが 美を希求する心は何時の世も同じである。 例えば「正…

民芸は難しい!?

大阪吹田の日本民芸館で開かれているインドの 染織展を見に行った。 案の定見るべきものは無かった。。 手間の掛かった仕事がなされているが感心しない…欲しく無い。 それって何故だろう? そもそも柳宗悦が高く評価した 「無名の職人による民芸的美術工芸」…

日本の染織を世界遺産に!

先日「和食」が世界遺産に登録されたことが大きな話題なったことを覚えていますか? 鰹と昆布のダシを使って食材本来の旨味を引き出す和食は、 平安時代に始まる宮廷料理が室町時代、茶道の懐石料理へと 進化し現在に至るという。 世界でも類稀な日本文化の…

衣更え

6月1日になると一斉に「衣更え」となる。 袷のきものが単衣に帯と襦袢は薄物になる。 我が店の設えも木綿から麻の暖簾に、ガラス戸が「葦戸」の建具へと衣更えをする。 季節感を大切にして折々の風情を楽しむ心は日本人ならではの感性、いつまでも続けて行き…

歌舞伎と「きもの」

音羽屋(尾上菊五郎)さんの長男菊之助さんと 播磨屋(中村吉右衛門)さん四女瓔子さんの 結婚披露宴に招待を受けホテルオオクラに向う。 播磨屋さんには30年にわたるご贔屓を頂き今宴で着用の打掛も制作させていただいたご縁で高い席を用意いただき恐縮している…

2014年夏の「はんなり展」を終えて

例年銀座、吾妻通りで開催していた夏物の展示会を 今年は並木通りで開催した。 夏のきものは今では特殊なものになったかのようである。 暑い盛りに帯で締め付けられるのは真っ平 というのが女性の本音であろう。(よくわかる!) 染屋でも夏物は作らない所が多…

出版感謝パーティー

思いの外素晴らしい仕上がりであった「布の道標」の出版を記念してお世話になった方々を祇園三國にご招待して賑々しく出版感謝パーティーを催す。 あいにく杉本博司さんはパリでの個展の為出席はかなわなかったが泉田老師もわざわざ大宇陀からお出まし頂き愉…

能は難しい!

妻が観世流の謡を習い出して何年になるだろうか? 発表会があるというので岡崎の観世会館に赴く。 小さい子供達の出番が終わると妻ともう一人シテ役の女性、 地謡をしてくれる先生方7人の錚々たる布陣で始まった。 謡は言わずと知れた 観阿弥、世阿弥が室町…

新緑の糺の森(ただすのもり)

4月に満喫した桜を連休の蓼科で今いちど愛でる機会を得て 大満足、残雪の峰々が連なるアルプスは京都では観ることの できない雄大な自然美である。 この山々に故郷の想いを抱く人もきっと多いと思う。 やはりこの季節はおのずとと心が華やぎ身も心も解放さ…

そうだ「京都」行こう!

このJRのキャッチコピーのセイではないだろうが、 京都にやって来る観光客が多い。 特に今年は白人系の団体客が目に付く。 中国人だってきっと多いのだろうが一目見て東洋人は背も低いし 我々に似ているので目立たない。 先日の桜満開の頃は、祇園界隈でも人…

「布の道標」完成

私にとって一つの集大成と言うべき拙著 「布の道標」が先週ようやく納入された。発案から丸一年を要したが待った甲斐があった出来栄えに 私自身も満足し、大きな達成感を味わっている。 何度もブログに書き及んだ「正倉院裂」の入手は強運としか 言いようの…

再び杉本文楽を観る

多分最初で最後の大阪公演を柳さんを誘って観賞に出かけた。 関西は私の地元であり会場が5000人収容のフェスティバルホールとあって交際範囲の中から一人でも多くの人に見て欲しいと懸命に勧誘に務めた。 その結果、友人、知人ら多勢が 決して安くないチケッ…

綺麗な「きもの」と「帯」を作りたい!

私がズーッと考えてきたことだ。きものは綺麗でなければならない。綺麗でなければきものじゃない。 勿論「綺麗」の定義は個人的主観であることも 述べねばならないが、敢えて独善的に申せば 綺麗な物を身に纏うと女性は必然的に綺麗になる。 私の美学では綺…

車窓から

無事に展示会を終えて帰路に向かう車窓からオレンジ色に光る 太陽を直視する。普段の生活の中で太陽をまっすぐに見ることはあまり無いがじっくり考えてみれば地球の歴史は太陽が全ての始まりだと気付く。 太陽の熱と光が地球に海を作り植物、動物を生み育て…

千客万来

三日間の東京六本木、展示会を終えてドーッと疲れが吹き出す。 皆さんのお陰で三日間で100人の来客を得、 何年か振りで充実した日々を過ごすことができ感謝している。 会期中は出来るだけ多くのお客様と話し、お互いの意思の疎通を図っているが、今年もいろ…

ペリエ ジュエ+妹島和世+ぎをん齋藤

建築家 妹島和世さんがデザインしたフランス、シャンパン会社 ペリエ ジュエのシャンパングラスをモチーフとした「きもの」を制作した。 最初にオファーを受けた時には内容がよく理解できなかったが、 よく話しを聞いてみるとペリエ社のグラスデザイナーに妹…

前評判上々!

来月開催する東京3月展の前評判が上々である。 展示会前に事前予約の返事をいただくことにしているが、 今回の「古渡り更紗」への期待が大きいとみえて、 しばらくご無沙汰のお客様から出席の返事を頂くことが多い。 更紗を手掛けてみて、 かなりの種類の物…

自然淘汰?

西陣織帯、特に手織りの世界は以前から何度となく その危機的状況をブログに投稿してきたが、ここに至って断末魔の様相を呈している。 我が齋藤織物においても熟練工は70ー80歳台となり、 それに続く世代は20ー30歳とかけ離れてしまった。 この責任は私にあ…

突然の別れ

人の命は儚いものと知りながら事実に直面した時の動揺は計り知れないものがある。学生時代から親しい友人の妻が突然亡くなったと知らせが届いた。急いで九州に向かい友を励まし慰める。 享年61歳、余りにも若すぎる死である。 死に至った経緯を尋ねると全く…

同世代を生きる人の美意識

11月にパリで公演された杉本文楽「曽根崎心中」の報告が 婦人画報に掲載された。 噂によると大盛況の一週間であったらしい。 流石だ!! 日本人の私でさえ昔の言葉で良く分からない台詞があるというのに フランス人が解るとは、、、。 果たして人に感動を与…

出版遅れのお詫び

「布の道標」の出版が遅れている。 河上先生が大学の卒論と入試の時期に重なり原稿が遅れて しまい、さらに英訳をお願いしているモニカ テーベさんも 大変お忙しく、こちらの方も遅れ気味である。 もう少しお時間を頂きたく ご注文いただいた皆様にお詫びも…

2013年を振り返ると…

年末を振り返ると… 床の間には「無事」の掛け軸をかけ、 一年の無事を寿ぐ習慣がある。 私は「今年の10大ニュース」として、個人的な選別で手帳に書くことを20年近く続けている。 全くプライベートな視点で選ぶので他人が見ても意外なものや、意味不明なも…