気になる一本の桜樹
今年の桜はあっけなく満開になり、まだかまだかと待ち焦が
れる暇もなかった。肌寒い日が続くと思っていたら急に20度
を超える初夏の陽気に私の身体も春の準備が出来ないまま
日課のジョギングに出かけてみると、一晩で歩道の桜が咲き
始めていた。
その中に気になる一本の老桜がある。まだ満開前だという
のに沢山の花弁が根元からポトリと落花している、しかも
花弁は開いたまま。
盛りを謳歌することもなく落花するこの樹に無情の哀れを
感じて足を止め繁々と樹を眺める。
この症状は今年に限ったことではないとその時気がついた、
確か去年もこの樹の下に沢山の額のついた花が散乱して
いた。生物学的には遺伝子のせいだとしても本人は悲しく
ないのだろうか?
花の盛りが短いのは西行の和歌を待つまでもなく、一雨
来れば雪の如く薄ピンクの花びらが道一面を覆う。
人の命も永いようで短いと初老を過ぎれば感じてしまうが、私
が骨髄移植を受ける前、医師から聞かされたインフォームド
コンセントで術後5年の生存率10%と宣告され、命の儚さを
知らされた。
桜樹への哀愁は自分への哀れだろうか。
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