歌抄絵の世界
耳慣れない言葉かもしれない。
意味は和歌をモチーフにして描いた絵のことである。
きものや帯をデザインするには何らかの助けがなければ
難しい。
それが古布であったり感動した自然風景であったりすることが多いのだが江戸時代は「万葉集」「古今集」や「源氏物語」を
主題にきものを作ることが流行した。
着物の柄を隠喩とし和歌を言い当てるという遊びがあったと聞く。
御所解模様などはその最たる例といえる。
日本が誇るべき芸術文化は数多くあるが、
その頂点に立つものこそ文学であり和歌であると信じている。
平安時代を通じて歌を知る者が人であり、
和歌を巧みに詠める者が一流人であった。
「源氏物語」がシェークスピアが登場する600年前に書かれた
事実からしても日本が、いかに文学先進国であったかを物語っている。
万葉時代から平安時代にかけて多くの歌人を輩出したが、
中でも藤原定家と西行が言葉の響き、感情表現の巧みさで
私の好きな歌人であると言える。
「見渡せば花も紅葉もなかりけり苫屋の浦の秋の夕暮れ」(定家)
この歌は「侘び」とはなんぞ!?
と問われた武野紹鴎が答えとした歌としてすこぶる有名である。
平安文化を象徴する「花」と「紅葉」を省く
中世的な隠棲の精神が芽生えている。
西行が詠んだ
「心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮れ」は
景色が頭の中に自然と広がっていく。
彼らの和歌を自分のイメージと掛け合わせて「きもの」の絵にしてみたいと考えているのである。
上手くいくかどうか判らないが、
チャレンジしてみる価値はありそうだ。
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