続 平安裂
春日大社に奉納すべく制作していた
「藍地 小花唐草紋綿」が完成し受書拝受できる運びとなった。
本歌は精密に観察してみると経糸も緯糸もずいぶん傷みがあり制作当初の図柄とはかなり違ったものであると判明した。
上記の本歌と複製品を見比べると別物に見えるが1000年の
風雪によってここまで劣化してしまったとみるべきである。
全丈3丈5尺の内2丈は新調される春日大社絵巻の巻頭の
表具に使用し、1丈5尺を反物として奉納することに決まった。
今回の唐草綿裂は
平安時代の染織品のごく0.1%にも満たないもので、
その全貌を推し量ることは到底不可能なことである。
当時の遺構、遺品から推測すると
平安時代こそ日本の誇るべき文化の最盛期であったことは
間違いなく、遺失した染織品に接することができないのが
口惜しい。。
この裂意外には京都の聖護院に伝わる七宝裂が明らかに
邦製平安裂である(糸使い、織組織による推測)と思われるので目視のみの手段だが再現してみようと思っている。
染織品は脆いものである。。特に火に対しては無抵抗である。しかも崇拝の対象ではないので粗末な扱いをされやすい。
日本の染織史上もっとも「おいしい」部分が欠落しているように思えるのは平安時代の衣類が存在しないからであろう。
奉納に際する形式を友人の澤井氏から懇切な御教示を頂いたことに感謝している。
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