最強の生地

杉本博司の依頼を受けて制作していた
電磁場幡幕」がとうとう染め上がった。
経験のないモチーフ、巨大な寸法に悩まされ続けた半年であった。


氏もわざわざ入洛され検分されたが気に入ってもらえたようで
杉本、齋藤共同制作の朱印まで戴き誠に光栄である。
スタッフ一同もやれやれと安堵の胸をなで下ろしたのである。


実は私はスタート時点からかなり自信を持っていた。


というのも世界最強の白生地を持っていたからだ。


この生地は10年ほど前から滋賀松さんという女性に
繭から糸引き、機織りまで一人で作ってもらっている物で、
年間10反程度しか出来ない貴重なものだ。


その素晴らしさは一般の絹布とは比較にならない美しさと力強さを兼ね備えた生地である。


一種のオーラを放っていると言っても過言ではない。


北大路魯山人」曰く、
料理の善し悪しは食材9割、腕1割と…

染物は、    白生地7割、腕3割だと思っている。


いずれにしろ素材でほとんど決まってしまうのだ。


一般に売られている白生地は高いもので4万円程度であるが
志賀松女史のは10倍近い。

高価すぎて驚かれるに違いないが本当の贅沢とはこんなものだと思っている。


今後は練緯桃山時代、辻が花を染めた平織)と呼ばれた生地を彼女と共に試作し、より高い目標に挑戦したいと願う。


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